けんちゃん

けんちゃんは私の叔父である。

彼は「あ、あ」とか「パパパパパ」とかしか喋れない。
理由は生まれる時にへその緒が首に絡まっていたから。脳に酸素が行かなかったらしい。唇が真っ青で生まれたと、おばあちゃんが言っていた。
50を過ぎたおじさんだけど、脳年齢は1歳にも満たないと言われている。

19人の命が奪われた相模原障害者施設殺傷事件は記憶に新しい。
そのニュースで「重度の知的障がい者」という表現を聞いて、そうか、うちのけんちゃんは言われてみれば「重度の知的障がい者」だと気づいた。

だから何が言いたいのかって、私にもわからない。

けんちゃんは一人でトイレに行けない。
おじさんなのにいつも誰かの腕を掴んで歩いている（掴まれているのも、私の父や施設の方で、おじさんだったりする。構図はおじさん同士のBL）。
だいたいいつもニコニコしているけど、レストランで暴れたり叫んだりしちゃうときもある。

でもなんとなくコミュニケーションは取れる。
「これ欲しい？」って私が聞くと全力で首を振られたりするし。
彼は甘いアイスコーヒーが大好きで、父がサプライズでマウントレーニア（コンビニ等で売ってるカップのコーヒー）をあげたときに彼が見せた笑顔はとっても可愛らしかった。嬉しさを抑えきれなくて自分で口を押さえていた(笑)

やっぱり、何が言いたいかわからない。
誰もが助け、助けられ、生活している。笑顔は人を救う。

そんな感じだから、明日からもみんなで愛たっぷりに生きていこうね。